最高裁判所第一小法廷 昭和42年(あ)346号 判決 1967年10月12日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人滝島克久の上告趣意第一点について。
所論中、原判決は不明確な算定基準によって被告人に追徴を命じたものであって憲法二九条に違反するとの点は、記録を調べてみても、原判決の採用した本件犯罪貨物の国内卸売価格(内国消費税込み)の算定方法は適正且つ明確であると認められるから、その前提を欠き、また、原判決が共同正犯者の一人に過ぎない被告人に対し本件犯罪貨物の価格全額に相当する金額の追徴を命じたことが憲法の同法条に違反するとの点も、関税法一一八条二項の規定により犯罪貨物等の価格に相当する金額を追徴するには、共同正犯者の個々に対しその全額の追徴を命じ得るものと解するのが相当であり(当裁判所昭和三〇年(あ)第三四四五号、同三三年四月一五日第三小法廷判決、刑集一二巻五号九一六頁参照。)、同条項をこのように解したからといってそれが憲法二九条に違反することにならないことは当裁判所の判例(昭和三七年(あ)第一二四三号、同三九年七月一日大法廷判決、刑集一八巻六号二九〇頁)の趣旨とするところである。所論引用の当裁判所判例は右と異なる趣旨を判示するものではなく、本件に適切でない。それ故、論旨は理由がない。
所論中、原判決が被告人に対する追徴金額中に犯罪貨物に対する物品税相当の金額を算入したことの違憲(二九条違反)をいう点は、その実質は単なる法令違反の主張に帰し、適法な上告理由に当らない(関税法一一一条一項に違反して輸出された犯罪貨物に関し、同法一一八条二項に定める「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行なわれた時の価格」とは、その犯罪が行なわれた当時における犯罪貨物の国内卸売価格を指し、右価格中には内国消費税および通常の卸売取引における適正利潤が含まれるものと解するを相当とするから、これと同趣旨を判示する原判決の法令解釈は正当である。当裁判所昭和三二年(あ)第九三五号、同三五年二月二七日第二小法廷決定、刑集一四巻二号一九八頁、同三二年(あ)第一七六八号、同三五年一二月一三日第三小法廷決定、裁判集一三六号四三五頁、同三七年(あ)第二四一三号、同三九年七月二日第一小法廷決定、裁判集一五二号八三頁等参照。)。
同第二点について。
所論は、量刑不当の主張であって、適法な上告理由に当らない。
よって、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)